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ノヴォデヴィチ墓地 [お墓]

2012年7月24日(火) 現地時間 午前9時51分 モスクワ ノヴォデヴィチ墓地

ノヴォデヴィチ墓地①
ノヴォデヴィチ墓地の門

というわけで、モスクワに戻ってきた私は真っ先に墓地に来てしまった…。
ノヴォデヴィチ墓地は絶対に取材しておきたいところだったのだ。会いたい人が何人も眠っている。
大きな墓地で、サンクト・ペテルブルクのチフヴィン墓地、ラザレフ墓地よりもはるかに広い。
広い墓地であるから、お目当ての人物がどこに眠っているのか、事前に確認しておいた方がよい。
墓地の入口付近にある案内板で位置の確認はできるが、表記がキリル文字なのが難である…。
ガイドブックに掲載されているキリル文字一覧表を参照しながら、人物の名を照合させていった。
10分ほど!かけ、会いたい人物が眠る区画をメモし終えて、ようやく探索開始である。

案内板
著名人のお墓の位置を示す案内版

ノヴォデヴィチ墓地②
広い墓地…

さて、私が「会いたい」というのは主に音楽家や文学者などの文化人が中心なのである。
だから、政治家のお墓などは今までそんなに訪れていないはず。レーニン廟は行ってしまったが…。
そんな私なのだが、ノヴォデヴィチ墓地では政治家のお墓を最初に発見した。
ロシア共和国の初代大統領、ボリス・エリツィンのお墓である。
ロシア国旗をモチーフにした墓石で、墓地の区画から飛び出したところにあるのでよく目立つのだ。

エリツィン
ロシア共和国初代大統領 ボリス・エリツィン (1931-2007) のお墓

リヒテル
ピアニスト スヴャトスラフ・リヒテル (1915-1997) のお墓

ロストロポーヴィチ
チェリスト ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ (1927-2007) のお墓

他にも個性的な墓石が多い。特に巨大な顔が墓石からにゅっと出ているようなお墓が目立つ。
勝手な想像だが、こういうのはソ連時代の共産党のお偉いさんのお墓ではないだろうか?
フルシチョフのお墓もここにある。白と黒の墓石が組み合わさった変わったお墓だった。
このユニークな墓石はエルンスト・ネイズヴェスヌイという前衛芸術家によるものだそうだ。
フルシチョフは生前、このネイズヴェスヌイの作品を批判していたというから、何という皮肉。

ごつい墓が多い
ごついお墓が多い…

フルシチョフ

ニキータ・フルシチョフ (1894-1971) のお墓

映画ファンには外せないセルゲイ・エイゼンシュタインのお墓もある。
エイゼンシュタインは今のラトヴィアのリガに生まれた人。
この前年、私はリガを訪れて、ユーゲントシュティール建築群を見ていた。
あの奇想天外な建築群を設計したのはセルゲイの父であるミハエルだった。そのことを想い出した。
セルゲイはその才を受け継いだのか、映像の分野で多大な影響を与え続ける作品を世に残した。
ただ、スターリンが政権を握ると、作品は批判され、後年は満足のいく作品を残せなかったが…。

エイゼンシュタイン
映画監督 セルゲイ・エイゼンシュタイン (1898-1948) のお墓

シャリアピン
オペラ歌手 フョードル・シャリアピン (1873-1938) のお墓

スクリャービン
作曲家 アレクサンドル・スクリャービン (1872-1915) のお墓

そのエイゼンシュタインの「イワン雷帝」で、映画音楽を担当したのはプロコフィエフである。
プロコフィエフもスターリン政権下で批判の槍玉にあげられた人物だが、やはりここにお墓がある。
モダンな作風で知られたプロコフィエフのお墓は、意外にも無個性の目立たないものだった。
墓石に刻まれている名前もキリル文字なのでわかりづらい。ただ、没年月日がポイントである。
プロコフィエフが亡くなったのは1953年3月5日。これは奇しくもスターリンと同年同日なのである。

プロコフィエフ
作曲家 セルゲイ・プロコフィエフ (1891-1953) のお墓

チェーホフ
劇作家 アントン・チェーホフ (1860-1904) のお墓

ゴーゴリマヤコフスキー
(左)小説家 ニコライ・ゴーゴリ (1809-1852) のお墓
(右)詩人 ウラジーミル・マヤコフスキー (1893-1930) のお墓

もうひとり、作曲家で絶対に会見しておきたかったのが、ショスタコーヴィチであった。
正直、ショスタコーヴィチのお墓に行くことがいちばんの目的だったと言ってもいいかもしれない。
ショスタコーヴィチの墓石には、4つの音符が刻まれていた。「DSCH音型」である。
ショスタコーヴィチの名前をドイツ語表記にすると、イニシャルが"D.Sch"となる。
この"D.Sch"を"D-Es-C-H"という4つの音に移し替えたものが「DSCH音型」と呼ばれるもの。
ショスタコーヴィチの作品中によく登場する音型で、彼を象徴するモチーフであるという。
だが、そういうことと無関係に、私は交響曲第5番の第4楽章を思い出してしまうのであった。
ただ単に、ショスタコーヴィチの中でもよく知られている音楽だから思い出してしまったのである。

ショスタコーヴィチ
作曲家 ドミートリイ・ショスタコーヴィチ (1906-1975) のお墓

DSCH音型
墓石に「DSCH音型」が…

ひとり、ショスタコーヴィチの墓前で交響曲第5番、第4楽章を再生させている私。
すると、なぜだか知らぬが、ふとドストエフスキーのことが脳裏をよぎったのだった…。
それはまるで、ショスタコーヴィチから話しかけられたようでもあった。
「ドストエフスキーのお墓、ちゃんと訪れました?」と…。そう問われると、何とも心もとなかった…。
私は、この前日にドストエフスキーが眠るサンクト・ペテルブルクのチフヴィン墓地を訪れていた。
だが、どうもドストエフスキーと会見した記憶が無いのだ…。チャイコフスキーとは会見したが…。
私は交響曲第5番の演奏を停止させ、デジキャメを操作して昨日撮影した画像をチェックした…。
チフヴィン墓地で撮影した画像を確認したが、やはりドストエフスキーのお墓の画像が無い!
サンクト・ペテルブルクから600キロ離れたモスクワで、私はようやく昨日の大失態に気が付いた…。

観光客
著名人が多く眠る墓地なので、観光客をよく見かける

思わず天を仰いだ。せっかくロシアにまで来たのに、ドストエフスキーと会見しなかったとは!
きっと私は、チャイコフスキーやムソルグスキーのお墓で満足して、墓地を出てしまったのだ…。
でも、これはドストエフスキーが私に会ってくれなかったのだと考えることもできる。
あんなに時間のあったボストーク号の中でも、私はカラマーゾフを読了できなかったではないか…。
ドストエフスキーはそんなお前なんかに会ってやるものか!と思ったのかもしれない…。
という…。勝手な妄想でした…。

売店
墓地の売店。墓地の地図などが買えるようだが、あいにく閉まっていた…
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コメント 12

mimimomo

おはようございます^^
日本で言うなら、青山墓地かしら~
モスクワに行くことがあったら行ってみたいですが、
ツアーだと行かないかな。
本当に個性的なお墓が多くて、見ているだけで楽しいような、ちょっと不謹慎。
by mimimomo (2013-04-20 09:17) 

pistacci

エリツィンはまだ記憶に新しく、こんな斬新なお墓なのですね。
そういえば日本の著名人のお墓はどうなっているのかしら、と、
だんだん興味がわいてきました。会えるのですものね。
by pistacci (2013-04-20 10:51) 

りんこう

mimimomo さん、こんにちは!
青山霊園、多磨霊園、雑司ヶ谷霊園…。といった感じでしょうか。
ツアーの人たちも見かけました。墓地の入口に観光バスが停まっているくらいです。
外国のお墓は日本と違って個性的なお墓が多いんですよ。
おどろおどろしい雰囲気はありません。

pistacci さん、こんにちは!
最近本屋で「有名人のお墓巡り」みたいな感じな本を見かけました。
こういうのを趣味にしている人?けっこういるみたいです。
実は僕は日本のお墓はあまり行ったことがありません…。
外国のお墓は個性豊かですし、はるばる会いに行くのが感動なのです…。
by りんこう (2013-04-20 11:11) 

coco030705

こんばんは。
ロシアのお墓は本当に立派ですね。やはり国土がひろいからでしょうか。
by coco030705 (2013-04-20 21:15) 

orange

ロシアのお墓というと顔写真などを埋め込んだものを想像してしまいますが、もちろん…時代的にはそれは無理な方も。
それにしてもたくさんの著名人が眠っていますね。
お墓の手入れにKärcherを使っていますね。高圧洗浄機。
by orange (2013-04-20 21:44) 

COPP(コップ)

なるほど、列車の中での「カラマーゾフの兄弟」には、こういう伏線があったのですね。
シャリアピンが水鉄砲をかけられている・・面白いですね。
by COPP(コップ) (2013-04-20 22:35) 

PATA

以前書かれていたミスってドストエフスキーと会見できなかったことですか?
しかし日本には見られないようなお墓がたくさんありますね。
有名人のお墓って凄いんですね。
by PATA (2013-04-20 23:14) 

pandan

お墓の形も色も様々ですね〜
by pandan (2013-04-21 05:07) 

krause

ピアニスト、リヒテルの墓がここにあるのは知りませんでした。
by krause (2013-04-22 09:48) 

サンダーソニア

日本と違って個性的ですね。
by サンダーソニア (2013-04-22 12:51) 

りんこう

coco030705 さん、こんばんは!
ここの墓地は特にユニークなお墓が多いかもしれません。
記事に載せた有名人のお墓も変わったのが多いですよね…。

orange さん、こんばんは!
そういえば、顔写真が埋め込まれたお墓はあまり見なかった気もします。
でかい胸像がにゅっと出ているような墓石が多いんです。
シャリアピンは洗ってもらってました。気持ち良さそうです…。

COPP(コップ)さん、こんばんは!
そうです。遠く離れたモスクワで気がついたのです…。
当然もう戻ることはできません…。うっかりしていましたね…。

PATA さん、こんばんは!
そうなんです。ドストエフスキーのお墓を忘れていたのです。
数十メートル。いや数メートルまで近づいたのかもしれなかったのですが…。

pandan さん、こんばんは!
こういうユニークなお墓。誰が考えるんでしょうかね。本人…?

krause さん、こんばんは!
この墓地は有名な演奏家のお墓も多いのです。
ヴァイオリニストのオイストラフのお墓もこの墓地にあります。
ただ、見つけられなかったのですが…。

サンダーソニアさん、こんばんは!
個性的なお墓は目立つので見つけやすかったりします。
エリツィンのお墓なんかもかなり変わっていますよね。
by りんこう (2013-04-22 21:37) 

PopLife

南無阿弥陀仏ですとホワイ?エッ!英語圏でない。こりゃまた
失礼、ではまた、
ありがとうございました。
by PopLife (2013-04-23 09:44) 

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