シンガポール日本人墓地公園

2009年9月20日（日）、現地時間　午前11時20分、シンガポール　日本人墓地公園

「二葉亭四迷の碑」がほんとうにただの「碑」だとしても、
ここは日本人墓地公園なのであるから、お墓は当然ある。敷地内には日本式のお墓が並んでいる。
そして墓地の敷地の向こうにはコロニアル調の建物があったりするのである。
墓地内は現地の日本人会の方がよく管理しているのだろう。きれいに整備されている。
そして、あちらこちらに日本語による案内板が設置されており、墓地の沿革がよくわかる。


日本人墓地公園

案内板のひとつによると、シンガポールに初めて日本人が住んだのが、まだ江戸時代の1862年。
その後、時代は明治に変わり、この墓地ができたのが1891年（明治24年）ということである。
1877年（明治10年）にはマレー・ストリートの娼館に日本人女性がいたという記録があるそうだ。
そのうち日本人社会ができあがり、明治30年代に日本人社会は著しい発展を遂げることになる。
ここはそういった歴史の過程で誕生した墓地であるわけだ。
今ここには戦前活躍した日本人、戦犯となった人や、いわゆる「からゆきさん」が眠っている。


「マレーのハリマオ」の谷豊の石碑

二葉亭四迷だけが目当てで訪れた私は、こうした沿革を知り、心が引き締まる思いだった。
そういえば、日本式のお墓が並んでいるのはいいが、そのところどころに小さい石が立っている。
案内の看板によるとこれらがその「からゆきさん」のお墓なのだそうだ。
墓碑銘もない小さな墓石。異国の地で人知れず亡くなっていった「からゆきさん」たち。
このようにして生きていた証が残されている。小さな墓石だが、とても重く胸に突き刺さる。
もうなんだか、二葉亭四迷の碑のことはどうでもいい気がしてきたな…。


「からゆきさん」のお墓

まあ、そうは言っても、せっかくここまで来たのだから、二葉亭四迷の碑のもとへ。
二葉亭四迷の碑は「からゆきさん」のお墓とは対照的な立派な石碑であった。
案内の看板によると、これはやはり「墓」ではなく「碑」であることがあらためて説明されていた。
遺骨の全ては前回の記事でも触れたように豊島区の染井霊園に埋葬されたということだ。
さらに、この石碑の建立は1929年（昭和4年）ということで、亡くなってからだいぶ後のものだった。
二葉亭四迷が亡くなったのは1909年（明治42年）のことである。


二葉亭四迷終焉之碑

シンガポールの日本人墓地公園にあるのは二葉亭四迷の「墓」ではなく「記念碑」。
この事実を確認でき、りんこうの当初の目的は達成されたのだったが、
どうも、この墓地にいると小さい「からゆきさん」のお墓が気になってしまうのだった…。
近代的都市国家シンガポールでりんこうが最初訪れたのがこういうところだったわけだが、
華やかな歴史の裏側をほんとうに少しだが垣間見ることができたような気がして、訪れてよかった。
最後にお堂に設置されていたお賽銭箱にいくらかの日本円硬貨を投げ入れて墓地を後にした。


お堂

実は時刻はこの時点で正午を過ぎていた。もう取材の計画などズタズタになっている。
そんな中、これから私はシンガポールのお決まりの観光スポットに向かう。
言うまでもない。マーライオンである。全く何のオリジナリティもないつまらない取材である。
だが、この日はシンガポール取材ということで決め込んでいる。
取材が面白くなるのは明日ユーラシア大陸最南端に向かう時だろう。
それは情報が少なくかなり不安でもあったのだが…。まあ、それはまだ後のお話…。


杉良太郎の揮毫による石碑。達筆でなんて書いてあるのかわかりません

コメント 2

来月ロンドンへ行くので、ロンドンのギャラリーの情報を検索していてこのサイトに辿り着きました。私の興味のあることが満載で、とても楽しく読んでいます。りんこうさんって、知的で思いやりのあるすてきな方ですね。読み応えがあるのでまだまだ読破できていませんが（そして読み終わってしまうのもなんだか惜しいほどです）、これからも更新楽しみにしています。
by sawa (2009-10-15 22:45) 

sawa さん。はじめまして！
うれしいコメントありがとうございます！
過去の記事にはお恥ずかしい記事がたくさんありますが、どうかお許しください。
これからもっとご期待に応えられるような記事にしなければなりませんね。
しばらくはユーラシア大陸最南端への旅にお付き合いください。
またコメントを頂けるとうれしいです。ロンドン楽しんできてくださいね！
by りんこう (2009-10-15 23:33)