SSブログ

ビアホールで出会った夫婦 [2007中欧3ヶ国の旅]

宿にチェックインし、部屋に荷物を置く。
とりあえずテレヴィジョンをつけるも、何を言っているんだかさっぱり分からない。
ぎゃはは。とテレヴィジョンの電源を切って夜のプラハに繰り出した。

宿を出て右側にひたすら歩を進めると、国立博物館があるはずである。
この国立博物館が面しているのがヴァーツラフ広場。
ここはパリでいうと、シャンゼリゼ通りのような雰囲気があるところで、
1968年のいわゆる「プラハの春」。そして、1989年のビロード革命。
歴史の舞台となった場所なのである。


国立博物館

ヴァーツラフ広場周辺は5年前訪れた時よりも、確実に発展しているように思われた。
その一方で、今までのちょっとヘンテコなプラハらしさは失われてしまうのだろうかと寂しくもなる。
ガイドブックによると、ヴァーツラフ広場をヴルタヴァ川方面に歩いていき、
Vodickova という通りを左折すると、Novomestsky Pivovar というビアホールがあるようだ。

このビアホールは宿からも歩いて行けるところにあるので、
初日の夜はまずはここでビェールを呑んでやろうではないかと企んでいたわけだ。
ただ、心配なこともあった。それは常に私は一人旅であるということで、
1人でビアホールに行くというのは、何とも心細い感じがしてしまうということである。


国立博物館側から見たヴァーツラフ広場

葛藤はしたが、ビェールを呑みたいという欲望が不安を凌駕し、店内へゴー。
店内に入ると、あなたは1人か。と尋ねられた。
そうである。と伝えると、2階へ上がってください。と告げられた。
2階へ上がると、そこにいた店員から座席に誘導されたが、そこには先客がいた。

かくして、私は時を同じくしてこのビアホールを訪れていた中年の英国人夫婦と相席となった。
私は戸惑いつつも、ははは。とこの夫妻に不気味に笑っていたのだが、
やはり気味悪がられてしまったようだ。とくに夫人は明らかに怪訝そうな顔をしていた。


ビアホール「Novomestsky Pivovar」

店員が注文を訊きに来たので、私はメニューを指差しながら注文はしたが、
メインディッシュに添える炭水化物にライスを要求してしまった。
私はチェコ名物のクネドリーキ(蒸しパンのようなもの)を要求しようと考えていたのだが、
相席となったことで動揺してしまい、本来ならば希望しない食品を要求してしまったのである。

さて、このように相席となったからには、だんまりを決め込んでの食事というのはむつかしい。
この英国人夫婦と自由に会話できたらよいことだ。しかし、私は語学に自信がないのである。
ま、結果的には私はこの英国人夫婦と会話をした。
会話をしたから私はこの相席した2人が英国人でかつ夫婦であることを知っているのである。

英 「あなたは何処より来たの?」
私 「ジャパンです」
英 「ジャパンといえばトーキョーだよね。あとキョートだよね」
私 「オーサカもありますよ」
英 「オー。知ってるよ。オーサカね。ところで君はトーキョーから来たの?」
私 「いえ。サイタマです」
英 「サイタマ?知らないぜ」
私 「トーキョーの近くです」
英 「オー。トーキョーね。ははん」

みたいな会話であった。
が、ヒアリング能力が欠如している私は正確に夫妻の言わんとしていることを理解できなかった。
旦那は、私の英語が悪いから伝わらないのさ。とのたまっていたが、んなわけは無い。
ま、どちらかといえば旦那より夫人のイングリッシュのほうが聞き取りやすかったのだが。


「Novomestsky Pivovar」 においてあった小冊子

そんな中、私は500mlの黒ビェールを飲み干し、もう一杯別の銘柄のビェール500mlを呑んだ。
そのうちアコーディオン奏者が登場し、リクエストに答えながら流麗な旋律を奏で始めた。
地元の人なのだろうか、4人で訪れていた女の子たちが音楽に合わせてノリノリであった。
笑いながら両手を揺さぶったり、足踏みを踏んだりしていたのが印象に残っている。

存分呑んだるぞ!と意気込んではいた私だが、早い時間帯に腹いっぱいとなってしまった。
ここらへんで、そろそろお暇するかな。私は英国人夫婦によい旅を!と別れを告げて店を出た。
夫妻の怪訝な表情は消え失せていた。2人とも笑顔で私を見送ってくれたのである。
時計を見やると22時をまわったところ。宿に戻る前に、ちょいと旧市街広場に足を伸ばそうか。
カレル橋も渡っちゃおうかしらん。ほろ酔い加減の私の足は疲れを知らずずんずん進んでいった。

モーツァルト:交響曲第25番&第40番

モーツァルト:交響曲第25番&第40番

  • アーティスト: ワルター(ブルーノ), ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団, モーツァルト
  • 出版社/メーカー: ソニーミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 2004/11/17
  • メディア: CD


nice!(3)  コメント(5) 
共通テーマ:旅行

nice! 3

コメント 5

plot

なかなか快調ですね。
ナイス・カンバセーション(で良いのかな?)!!
欧米人の「怪訝な表情」は気に留めないに限ります。彼らは「怪訝な表情」が失礼にもなり得るという意識がはなから無いのですから。日本人の「曖昧な微笑み」と好対照ですよね。
by plot (2007-02-03 08:24) 

TaekoLovesParis

おもしろかったです。りんこうさんの描写力が優れているので、私もビェールの世界に引き込まれましたよ(笑)。日本の若者のひとり旅、話してかけてみようという旅好きの英国夫婦の気持ちもわかります。
by TaekoLovesParis (2007-02-03 10:53) 

りんこう

plot さん。こんばんは!
アドヴァイスありがとうございます。
今回の相席はなかなか勉強になりました。
コミュニケーションには苦労しましたが、
英国人夫婦と私はプラハは美しい街だとの見解で一致しました。

Taeko さん。こんばんは!
文章をほめてくださりありがとうございます。
これからも面白おかしく、でもありのままに伝えていけたらと思います。
by りんこう (2007-02-03 17:49) 

t.t.

りんこうさん、はじめまして。

夏のプラハ旅行のことを調べていて、このページに出会いました。
そのビア・ホールは2000年3月にプラハを訪れた最初の晩にビール
を飲んだところで、懐かしくなって何か書きたくなりました。季節も
シチュエーションも、よく似ています。
ぼくが通されたのも二階。そのときはすいていて、ぼくはテーブルに一人。
隣のテーブルには、若者が三人。ちらちらとこちらを見ながら何かを
話している。怪しい。着いたばかりのぼくは、警戒してしまいました。
三人組は「こっちにこい」とかそういうジェスチャーもしていたのですが、
しばらくほっておきました。

そしたら、ウェイターが「あの方々からです」と、飲み物の入った
小さなグラスをぼくの前に置くではありませんか。緑色の液体。
なんだこれは。ますます怪しい。飲んだものかどうか、迷ったけど、
三人組の「飲め」というジェスチャーにつられて、口をつけました。
甘い、薬草酒でした。
「うまい」と三人組に英語で伝えると、「そうだろう」と言わんばかりに
嬉しそうな顔をする。悪い人たちではなさそうだ。

それで、彼らのテーブルに言って、少しだけ英語で話をしました。
三人は大学生で、おごってくれたのはチェコの名物薬草酒(名前は
忘れた)。この有名なリキュールを、ぼくははじめて知りました。
もっと早くうち解けてしゃべれば楽しかっただろうに。でも、ぼくのプラハ
第一印象は、りんこうさんと同様、快いものになりました。
by t.t. (2007-06-22 17:15) 

りんこう

t.t さん。はじめまして!
とてもいいお話でした。
三人組がt.t.さんにごちそうしたのは「べヘロフカ」でしょう。
http://blog.so-net.ne.jp/rinkou/2007-03-11
甘くて、のどがカーッと熱くなります。おいしいんですよね。
こういうコミュニケーションも旅の醍醐味ですが、
最初は警戒もしてしまいますね。むつかしいところです。
t.t.さんはまたプラハに旅されるのでしょうか。
おいしいビールとべヘロフカ楽しんできてください。
感想も待っています。
by りんこう (2007-06-24 18:13) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

2人のチェコ人夜の旧市街広場 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。