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チャップリンに会いに行った。 [お墓]

今日はクリスマスである。
ということはどういうことかというと、喜劇王チャールズ・チャップリンの命日なのである。
チャップリンは1977年12月25日、スイスのヴェヴェイという小さな町で永眠したのであった。

昨年、チャップリンのDVD-BOXセットが発売された。私はすぐに購入し特典映像も含め全部観た。
するとどうだろう。芸術家チャップリンに会いたくなってきてしまったではないか。
スイスに行こうと思い立った私は、アリタリア航空のティケットをゲットした。
ミラノ経由でジュネーブに飛ぶのだ。ジュネーブからヴェヴェイまでは列車で1時間ほどである。
1日目の夜にジュネーブに着く。2日目はヴェヴェイへチャップリンを訪ね、
さらにはオードリー・ヘップバーンも訪ねようと目論んでいた。
オードリーもヴェヴェイに近いトロシュナという村に眠っており、
チャーリーとオードリーのご両人を1日で訪問するというのは決して不可能ではないのである。

私は浮かれてミラノで乗り継ごうとしたが、モニターの表示を見ると「Cancelled」の文字。
何と。アリタリア航空はストに突入してしまっていたのである。
何だこれは。ジュネーブ行きは叶わないのか。チャーリーにもオードリーにも会えないのか。
ミラノのマルペンサ空港で降ろされてしまった私。ほうほうの体で深夜郊外のホテルに倒れこんだ。
アメリカ人の青年と相部屋となってしまった。彼はなにやら寝言をつぶやいており気味が悪かった。

翌日早朝、私は再びマルペンサ空港にいた。
「明日は飛ぶかもしれませんから」と関係者に言われていたからである。
しかし、状況は何も変わっていなかった。相変わらずストは続いていたのである。
私の旅の計画では2日目にチャーリーとオードリーを訪問した後、
3日目は列車でミラノへ行き観光する予定でいたのだ。でも、まさか最初からミラノに足止めとは。
もはやスイス行きは諦めようかと思った。
だが、私はアリタリア航空の日本人スタッフから列車のティケットを受け取ったのである。
お昼にミラノ駅からジュネーブ行きの列車が出るというのだ。これで勘弁してくれということだった。
これだとジュネーブ駅に着くのが夕方になってしまう。
チャーリー、オードリーに会える十分な時間はあるのだろうか。
さらに、次の日にはミラノに戻ってこなけりゃならないのだ。もうその予定で計画を立てていた。
だが、迷わず私はジュネーブ行きを決意し、マルペンサ空港からミラノ駅行きのバスに乗り込んだ。
やっぱり会いたかったのだ。

ミラノからジュネーブへの車中、私はアルプスの美しい光景を車窓から見た。
車窓の旅は約4時間。ナレーションはもちろん石丸謙二郎であった。
東欧人のロビン・ウィリアムス似のおっさんとたどたどしい英語で会話をした。
いくつもの大きな荷物を抱えている旅人であった。
厳しい手荷物検査をしなけりゃならんことを嘆いていた。いいおっさんだった。

ジュネーブに着いた私は即ホテルにチェックインし、ヴェヴェイへ向かった。
もうわかっていた、チャーリーとオードリーの2人を訪ねることはできないと。時間が無さ過ぎた。
どちらかひとりに会えれば…。私はオードリーは無理でも、チャーリーにだけは会いたかった。
あのDVD-BOXがどうにも私をチャーリーの元へいざなっている。
残念だがオードリーは断念しよう。きっとこれはオードリーに断られたということなのだ。

ヴェヴェイの駅に着いたのは午後6時ごろであった。
日が長く、まだまだ明るかったが、駅に着いても、チャップリンのお墓がどこにあるのかわからない。
ガイドにはそんなことは載っていないのだ。まったく手探り状態だったのである。
観光案内所へ行き尋ねようとしたが、もう閉まっていた。
誰かに訊いてみようかとも思ったが、小心者の私はなかなか声を掛けられない。
そんなこんなで、しばらく逍遥していると、「Corsier-village」という標識が。


標識のいちばん下に「Corsier-village」の表記が。

私はピンときた。コルシエ村はチャップリンが晩年を過ごした村なのである。
私は俄然元気になってきてずんずんとその方面に進んでいった。
すると次にこのような看板が出現した。


「Cimetiere」

お、墓地があるではないか。ということはチャーリーはここの墓地に眠っているのだろうか?
だが、この墓地、門が閉ざされており、私は勝手に入っていってよいものかと躊躇してしまった。
小心者である私は墓地の前をうろちょろしていた。なんたるあやしい東洋人であることか。
そんな風にきっと感じていたのであろうひとりのマダムが通りかかり、私に話しかけてきた。

マダム「何かお探しですか?」
りんこう「チャップリンのお墓です…」
マダム「それならここよ。門を開けて入っていくと奥のほうにあるわよ」
りんこう「ほんとうですか?ありがとう!ありがとう!」

嗚呼!ついに私はチャップリンに対面できる。
門は閉ざされていたものの、鍵がかかっているということでもなくスッと簡単に開いたのだった。
小さな墓地だ。世界中から愛された喜劇王が今はこんな小さな墓地にいる。
だが、それでよい。喧騒からまぬかれ静かに眠ることの出来そうな墓地だったから。
私はその静寂を乱さぬよう、ゆっくりと歩みを進めた。


ついに対面!チャーリーは最愛の妻ウーナの隣にいた。

私はMDを取り出しチャップリン作曲の名曲「smile」を聴いた。
オーケストラが奏でるそのメロディーはスイスの清澄な空気にあまりにもピッタリなのであった。
そして、「モダン・タイムス」のラストシーンが想い出され、私は感極まった。

この感動はチャップリンに対する強い思い入れがあったからであることはもちろんだが、
予想外の困難を克服し、この地球上の一点に辿りつけたことで感動は倍増されていたと思う。
それにしても、私を不審に思ったのかしらないけれど、話しかけてくれたマダム。
あなたはきっとチャーリーの使いだったのですね。ありがとうチャーリー!ありがとうマダム!


ヴェヴェイ、レマン湖畔に立つチャップリン像。

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しゅん

感動する映画をとのリクエストに街の灯と答えてレンタルビデオのパッケージを見せたら
「いやいや、笑える映画じゃないってば」と却下されてしまいました。
勿体無い話だ・・・。
by しゅん (2005-12-25 22:04) 

Taeko from Paris

Ima TV de ice skate no gala "Matino-hi" yatteimasu.
Chaplin mono ha skate no gala de yoku yaru n dasou.
Nihon go tukaenai node ro-maji
by Taeko from Paris (2005-12-26 02:36) 

りんこう

しゅんさん。こんばんは!
その人はちゃんと「街の灯」を観たことがあったんですか?
多分ちゃんと観ていないと思います!
「街の灯」は笑える映画かもしれませんが、ある意味、残酷な映画ですよね。

Taeko さん。こんばんは!
スケートでチャップリンの曲をやるのですか。知りませんでした。
チャップリンは綺麗なメロディーを創るんですよね。
日本語使えないのはなぜ?海外にいらっしゃるとみた。
by りんこう (2005-12-26 22:17) 

TaekoLovesParis

パリの友達の家でりんこうさんのブログにたどりつきチャップリンのところを読んでいたら、TVから「街の灯」が聞こえてきて、何という偶然!とびっくりしました。「街の灯」はモノクロの静かな映画で曲がきれいだから、アイスダンスにぴったりなの。少女が赤いバラを一輪持ってすっと登場。美しいな!という表情で眺めるチャップリン役。ふたりで息の合ったダンス。パリは日本と時差8時間。
この時は25日の6:30PM。命日だからでしょうか?
by TaekoLovesParis (2005-12-31 00:44) 

りんこう

TaekoLovesParis さん。こんにちは!
パリに行かれてたのですね!いいですねぇ!僕もまた行きたいですよ!
パリで私のブログをご覧になったのですか。私のブログも世界進出ですね。
わけの分からないことを言ってしまいましたが、
チャップリンの選曲は、やはり命日だったからなのでしょうね。そう思います。
by りんこう (2005-12-31 10:45) 

りんこう

Taddy さん。コメントありがとうございます!
喜んでいただけて、とても嬉しいです!
Taddy さんも毎日のように映画を観ていたなんて凄いと思います!

チャップリンもレノンも伝えようとしていたものは共通してますよね。
Taddy さんのお父さんの反応、僕はとてもわかる気がするのです。
この旅は貴重な経験でした。こう、お墓を目前にして、本当にジーンとしたんです。
ストというトラブルがあったにもかかわらず、チャーリーに会えた喜び。
これは一生モノだと思います。
by りんこう (2006-02-10 20:21) 

takepii

来ました!!お墓行きたいですね。ストに会ったりして、人の行動にはいつもドラマがつきものですね。スマイルを私も聞こう!!と決心しました。最近では、歌詞もついて名曲の人にひとつなっていますが、オーケストラで聞くとしましょう。ヒトラーと誕生日がほぼ一緒というのは、よく聞きますよね。対比もよくされる。顔が似ているという人までいる(それは違うきがするんですけどね)。わたそじゃ、DVDボックスは持ってないですが、1枚500円で、今5枚ほど持っていて、お金に余裕があるときに出ている限り全部手に入れたいところですが。
今年の誕生日がもう来月なので、またその時語り合えたらいいですね。
by takepii (2006-03-27 20:35) 

lelsy

りんこうさん、初めまして。
実は私も来年の春にチャップリンとオードリーに
会いに行く旅を計画しています。
トロシュナ、モルジュについては、かなり、調べはついたのですが
ヴヴェイについて調べていて、このページにたどり着きました。

チャップリンの墓にはバスで行くような記述が多いのですが
りんこうさんはヴヴェイから歩いて行かれたのでしょうか?
もし可能でしたら行き方を教えていただけると助かります。

私はヴヴェイで半日くらい時間を取ろうと思っています。

by lelsy (2013-12-10 13:03) 

りんこう

lelsy さん、こんばんは!
いいですねスイスの旅。僕が行ったのは9年!前のことです。
むかしの記事は文章を読むのもはずかしいですね…。
バスで行く必要はないはずです。駅から徒歩圏内だったと思います。
確か、ヴェヴェイの駅前の通りを右のほうへ歩いていったと思います。
しばらく歩いて、右折して坂をずっと上って行きました…。
振り返るとネスレの本社がよく見えたと思います。
…。
気になったので、GoogleマップおよびGoogle Earthで調べてみました…。
すると、墓地はメル通りという小さな通りに面しているようですよ。
当時はGoogleマップとかもなかったと思うんで、辿りつけたのは奇跡です…。
by りんこう (2013-12-10 22:53) 

lesly

こんにちは。レス、ありがとうございました。google earthで見てみました。corsier parc Chaplinというのを見つけました。公園もあるみたいですね。今から計画を練って有意義な旅にしたいと思います。
フランス語が全然できないので心配です。英語は通じましたか?
by lesly (2013-12-24 10:47) 

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