聖ゲオルグ教会に眠る人々

2010年4月29日（木）、現地時間　午前8時14分、ミュンヒェン　聖ゲオルグ教会

私はハンス・クナッパーツブッシュ指揮による演奏を頻繁に聴くわけではない。
CD店に行っても、よほど大きな店でなければこの人のCDは置いてないだろうし、
大きな店に置いてあったとしても、決して数が多いようには思われないのである。
「発掘」された音源が新たにリリースされることはあるだろうけれど、
私もそこまで必死にこの指揮者を追いかけているわけでもないのである。
だのに、なぜクナッパーツブッシュの墓を訪れたのか。


聖ゲオルグ教会の墓地

それは以前ブルックナーの交響曲第8番の盤を聴いてとても印象に残ったからであり、
この盤のおかげで私はあの長大な交響曲の世界に足を踏み入れることができたのだと思う。
まあ、ようやく足を踏み入れただけなんだけれど。
ブルックナーの交響曲第8番はシューリヒトが指揮する盤も名盤とされている。
この盤はテンポが速く、スケルツォなどはまるで鋭く光線が突き進んで行く印象を受けるが、
一方、クナッパーツブッシュの盤はテンポがとても遅い。


ハンス・クナッパーツブッシュ (1888～1965) のお墓
何となしに野原にたたずんでいたら大地震が起こった。
よく地面を見てみたら、野原と思いこんでいたところは実は巨大な象の背中。
つまり私は動き出した象の背中の上にいたのである…。
わけのわからない譬えだが、私にとってクナッパーツブッシュのこの演奏はそんな印象である。
演奏全体の塊として鑑賞後に迫ってくるように思われたのである。



そのハンス・クナッパーツブッシュは妻マリオンとともに眠りについている。
マリオンという人は墓碑を確認すると1984年に亡くなったようで、
こういう年代を見ると、昔の人ではないのだなと少々身近な感じがするのだった。
墓には墓石ではなくて、埋葬者が記された金属製の十字架の標が建っていた。
この墓地はそのような墓碑が多かったのだが、こういう墓碑は今まであまり見なかった気がする。
よくはわからないが、この地域独特のものなのだろうか？


エーリッヒ・ケストナー (1899～1974) のお墓
聖ゲオルグ教会の墓地には他にも著名人が眠っている。
最初に訪れたクナッパーツブッシュのお墓は墓地の一番奥のほうにあるが、
墓地の入口付近には「飛ぶ教室」などで知られる作家エーリッヒ・ケストナーのお墓がある。
37歳の若さで没した映画監督ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーのお墓もある。
事前の調査では指揮者ルドルフ・ケンぺのお墓もファスビンダーのお墓のすぐ近くにあるはずだ。
だが、これはいくら探しても見つけることができなかった…。


ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー (1945～1982) のお墓

そういえば墓地は契約制であると聞いたことがある。契約が切れれば、そこは別人のお墓となる。
まあ、確かにそういうことをしなければ世の中お墓だらけになってしまうわけで。
でも、ケンぺのような有名な指揮者のお墓。契約が切れたということはあるのだろうか？
持参した案内図をいくら凝視してもケンぺが眠っているはずの区画には別人が眠っていた。
その別人は去年亡くなったばかりの人物のようで、墓碑も簡易的なものが備え付けてあった。
墓碑には八分音符が。知らない人物だったが、この人もきっと音楽関連の人物だったのだろう…。

ブルックナー:交響曲第8番

• アーティスト: ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団,ブルックナー,クナッパーツブッシュ(ハンス)
• 出版社/メーカー: MCAビクター
• 発売日: 1997/07/24
• メディア: CD

コメント 7

クナッパーブッシュのお墓拝見して、お墓探しがどれだけ難しいかをいくつか体験していましすので敬服するばかりです。
10年年以上も前からべームなどのお墓参りをと思いつつも果さずにおわりそうです。
by 塩 (2010-05-29 16:43) 

クナのお墓参りだったのですね。
私がブルックナーを聞き出した頃には、クナは既に亡くなっていて伝説の指揮者でしたが、ベームやカラヤンはまだ活躍していました。
クナのブルックナー、いいですね。あとはベームのが好きです。
by nyankome (2010-05-29 17:49) 

そうでしたか。
ワーグナーの曲の話が出てくるのではないかと
推測しておりましたが、外れました。
ファスビンダー。
亡くなったニュースを聞いたのは、ミュンヘンでした。

by orange (2010-05-30 00:49) 

りんこうさんとクナッパーツブッシュとの出会いは、ブルックナーの交響曲だったんですね。お墓は、色形ともにすてきですね。デザインされてますねー。ケストナーのもいいですね。草花に囲まれたお墓は、すてきだけど、
管理費の中で、こういうお花の手入れをしてくれるのでしょうね。
ファスビンダーは、戦後ドイツ映画界の旗手でしたね。ラン・ローラ・ラン、
とか「マリア・ブラウンの結婚」、早いテンポでおもしろかったです。亡くなってたんですね。
by TaekoLovesParis (2010-05-30 13:18) 

契約が切れて別人のお墓となる時、
そのお墓は（前の人の骨等は）、掘り起こすのだろうか・・・
| 墓 |ヽ(-_-; ) ウーン
by りゅう (2010-05-30 16:15) 

花がいっぱい植えられたお墓っていいなぁ。　素敵。
植えっぱなしでもどんどん花が咲いて増えていく球根植物にしようかな、
・・・なんて、自分のお墓の構想練っちゃいますね。
by Inatimy (2010-05-30 19:21) 

塩さん。こんにちは！
この墓地は小さいので比較的見つけるのは簡単です。
広い墓地だとそれはそれはもうたいへんです。
ベームはオーストリアのグラーツだったと思いますが未訪の地です。

nyankome さん。こんにちは！
まさかクナのお墓にいちばん最初に行くとは思いませんでした。
自分で言うのもおかしんですが…。
カラヤンのお墓はザルツブルク近郊だったと思います。
こちらも未訪の地。ミュンヒェンからザルツブルクは近いのですけれど。

orange さん。こんにちは！
仰る通りクナッパーツブッシュはワーグナーも有名ですね。
ファスビンダーの訃報にミュンヒェン、まさに当地で接したのですね。
実は、この人の映画はあまり観たことが無いので、
この機会に観てみようかと思いますね…。

Taeko さん。こんにちは！
荒れ果てて墓石も傾いちゃってたりするところもあるんですが、
ここの墓地はしっかり手入れが行き届いているようでした。
荒れている墓地をひとりで歩いていると正直ちょっと怖いんですよね…。

りゅうさん。こんにちは！
まあ、お墓も永遠のものではないんですね…。
まさに諸行無常ですな…。ははは…。

Inatimy さん。こんにちは！
お花きれいですよね。こういうところだと歩いていても怖くないです。
ちょいと散歩している感覚です。
まあ、ここは教会の敷地内だから特別な雰囲気があるんですが。

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by りんこう (2010-06-05 12:25)