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「四人の使徒」 [2010欧州5ヶ国の旅]

2010年4月29日(木)、現地時間 午前11時39分、ミュンヒェン ホーフブロイハウス

ごちそうさま!
飲んだ!

ごちそうさま!黒ビェール1リットルを飲み干した。いやあ。何とも心地よい。
私はあらためて周囲を見まわしてみた。団体の観光客が何組か来ていてビェールを楽しんでいた。
まさにここがミュンヒェンの一大観光地であることを再認識させられる。
その中を民族衣装をまとった若い女性が大きなプレッツェルを売って歩いている。
あれがよいビェールのつまみになるのだろうな。でも、もう私は1リットルのビェールで満腹である。
これだけ飲んだからには、出すものは出さねば…。トイレによってから大ビヤホールを出た。

ホーフブロイハウスの前新市庁舎
(左)ホーフブロイハウスの前
(右)新市庁舎

いい気分で近くの土産物店をひやかして歩きつつ、私はまた新市庁舎前のマリエン広場へ戻り、
地下鉄に乗り1駅。カールス広場へやって来た。ここから市電に乗り、今度は美術館へ向かおう。
しかし、やはり1リットルの液体を体内に取り込んだ影響は大きかった…。
私はまたもトイレへ行きたくなったのである…。トイレはどこかにないだろうか?
カールス広場を見まわすと、マクドナルドがあった。ここで用だけ済ませて素知らぬ顔して出てきた。
トイレで小銭を徴収されるのは日本人には不本意だが、マクドナルドだともちろん無料。便利便利。

カールス広場
カールス広場

すっきりした私はカールス広場から27番の市電に乗り、Pinakothek という停留所で下車。
ここら辺は美術館、博物館の類が集まっている地域のようであるが、私が訪れるのは2つの施設。
アルテ・ピナコテーク、ノイエ・ピナコテークがその2つで、この2か所を続けて鑑賞することにより、
西洋絵画の歴史の流れを再確認しようじゃないの。と企てていたのである。
まずは15~18世紀の絵画が展示されているアルテ・ピナコテークへ。
その後19~20世紀初頭までの絵画が展示されているノイエ・ピナコテークへという計画である。

市電27番に乗る
市電27番に乗る

アルテ・ピナコテーク
アルテ・ピナコテーク

かなり暑い。美術館前の広場にはまるで海水浴場であるかのような恰好の人が何人かいる。
その中を厚着の私は汗を拭きつつ、アルテ・ピナコテークの大きな扉へ向かう。
入館料は7ユーロ。入場時、ティケットと一緒に小さな金属チップを受け取ったのであるが、
これは何に使用するものなのか?よくわからない。そのチップを無造作にポケットにしまいこんだ。
次に、レジデンツでは借りなかったオーディオ・ガイドをここではなぜか借りてしまった。
やはり日本語は無く、聴き取れないのに英語のオーディオ・ガイドを借りた。何で借りたんだ…。

アルテ・ピナコテーク ティケット
入場ティケット

謎の金属チップ
謎の金属チップ

さて、オーディオ・ガイド片手に、まずは長い階段を上がり2階の15世紀の絵画の展示室へ向かう。
展示室に入ると、すぐにデューラーの「四人の使徒」が視界に入ってきた。
実は私がこのアルテ・ピナコテークで一番観たかった作品がこの「四人の使徒」なのである。
もちろん、ダ・ヴィンチ、ラファエロなども観たかったのであるが、一番はこの「四人の使徒」。
その「四人の使徒」が最初からお迎えしてくれるとは。これは予想外の驚きであった。
早速、絵画の前に設けられた腰かけに座り、しばし「四人の使徒」と対峙する。

ヨハネ・ペテロ組パウロ・マルコ組

アルブレヒト・デューラー作「四人の使途」


「四人の使徒」は左からヨハネ、ペテロ、パウロ、マルコと描かれた2メートルを超える大きな絵。
左右対称の構図が見事。ヨハネの赤とマルコの白。黒を背景に4人は重厚な存在感で立っている。
だが、よく観ると、ヨハネ・ペテロ組より、パウロ・マルコ組のほうが不安げにも観える。どうしたのか?
そうだ。せっかくだから借りた英語のオーディオ・ガイドで「四人の使徒」の解説を聴いてみるか。
ボタンを押すと、何やら思わせぶりなBGMが流れ、解説が始まったが、やっぱり聴きとれやしない。
私の取材。こんなざまで申し訳ないのですが、このアルテ・ピナコテーク。ちょっと巡ってみましょう。
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アルテ・ピナコテークにて [2010欧州5ヶ国の旅]

2010年4月29日(木)、現地時間 午後0時50分、ミュンヒェン アルテ・ピナコテーク

デューラーの展示室には「四人の使徒」の他にもう一点、私が知っている作品があった。
「自画像」がそれであるが、私はどこかの美術館で既にデューラーの「自画像」は観た記憶がある。
それが今、目の前にあるこの「自画像」であったのかどうか…。どうにも思い出せない…。
調べると、デューラーは「自画像」を何点か描いていて、以前観たのは22歳の時の「自画像」らしい。
22歳の「自画像」はルーヴル美術館にある。おそらく、かつてルーヴルでそれを観たのだろう。
今、私が観ているのは28歳の「自画像」。まるでキリスト。22歳の時と同一人物だとは思えない。

22歳の「自画像」28歳の「自画像」
(左)デューラー作 「自画像」(1493)ルーヴル美術館蔵
(右)デューラー作 「自画像」(1500)アルテ・ピナコテーク蔵

「自画像」といえばレンブラントも多くの自画像を残したが、レンブラントの「自画像」もここにはある。
1629年、画家23歳の時に描かれた小さな「自画像」。これも以前どこかで観た記憶がある。
どこかの美術館に貸し出されていて、それを観たのだろうか?これも、もはや思い出せない。
アムステルダムの国立美術館にも、これと似た若き日の画家の自画像が展示されている。
それを観た記憶が残っているのか?それとも、ただ単に図録かなんかで観ただけの記憶か?
私は、何だか美術鑑賞というよりは記憶の照合作業に陥ってしまっている…。

自画像(1628-29)自画像(1629)
(左)レンブラント作 「自画像」(1628-29)アムステルダム国立美術館蔵
(右)レンブラント作 「自画像」(1629)アルテ・ピナコテーク蔵

さて、デューラーの展示室の次の部屋がイタリア絵画の展示室。
ここにダ・ヴィンチが1枚ある。「カーネーションを持つ聖母」という作品である。
ここで皆様に告白しなければならないことがあります。私、この作品のタイトルを今知りました…。
つまり、私は鑑賞時、この絵にカーネーションが描かれていたことに全く気付かなかったのである。
全体的に暗い絵ということもあるが、購入した図録を観ても、カーネーションは目立たない。
聖母子のポーズもどことなくぎこちない。正直、これは私にとって魅力的な作品ではなかった…。

カーネーションを持つ聖母

ダ・ヴィンチ作 「カーネーションを持つ聖母」(1478-80)

同じ部屋にラファエロが何枚かあるが、一番印象的なのが「カニジアーニの聖家族」である。
近年修復をしたのだろうか。とても鮮やかな色彩。聖家族が三角形の構図に収まり安定感がある。
今、図録で確認したが、作品上部の天使たちは1983年の修復時に書き加えられたものらしい…。
何でも、天使たちは当初は描かれていたらしいが、18世紀末に塗りつぶされてしまったとの由…。
それを修復したということか。巨匠の作品でも後世、大胆に手が加えられてしまうものなのだな…。
でも、どうですか。私はこの作品、ダ・ヴィンチの「カーネーション…」よりずっといいと思います。

カニジアーニの聖家族

ラファエロ作 「カニジアーニの聖家族」(1505-06)

さて、デューラー、ダ・ヴィンチ、ラファエロと事前にお目当てとしていた絵画は鑑賞したが、
現地で観てはじめて印象に残った作品というのもある。最後にその内の2点をご紹介しましょう。
まずはルーベンスの「最後の審判」。これは縦6メートル、横4.6メートルもある巨大な作品。
私はルーベンスの宗教画はどれも同じ風に観えてしまう人間なのだが、「最後の審判」は違った。
この作品はその桁外れの大きさに圧倒される。思わず呆気にとられて作品の前に立ち尽くす。
バロック期の巨匠ルーベンスの面目躍如たる劇的な1枚。圧倒的なエネルギーで迫ってきた。

最後の審判

ルーベンス作 「最後の審判」(1617)

もう一点はブーシェによる「ポンパドゥール夫人の肖像」。
これも、私にとって何処かで目にした記憶のある作品だったが、これがミュンヒェンにあったとは。
だが、ブーシェは「ポンパドゥール夫人の肖像」を数点残しており、ルーヴルにも所蔵があるとのこと。
また、ブーシェの他にも、モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥールという画家も夫人を描いているようだが、
どちらの作品も夫人は椅子に腰かけ、遠くを見やる極めて似たポーズをとっているのが面白い。
まあ、とにかくアルテ・ピナコテークでは、知性を湛えた麗しき夫人の姿を拝むことができる。

ポンパドゥール夫人の肖像(ブーシェ作)ポンパドゥール夫人の肖像(ラ・トゥール)
(左)ブーシェ作 「ポンパドゥール夫人の肖像」(1756)アルテ・ピナコテーク蔵
(右)ラ・トゥール作 「ポンパドゥール夫人の肖像」(1748-55)ルーヴル美術館蔵

この「ポンパドゥール夫人の肖像」を鑑賞すれば、2階展示室を一通り鑑賞したことになる。
2階を鑑賞した私は、階段を降りて1階の展示室にも訪れたが、その際、係員に呼び止められた。
何だろう?私は、必死に耳の感覚を研ぎ澄ませ、係員の声に耳を傾けてみる。
すると、「~チップ」という言葉が…。あ。これは、入場時もらった謎の金属チップのことであるな…。
私は謎の金属チップをポケットから取り出した。すると係員はこのチップを私の襟に取り付けた…。
私は一応、「ダンケ・シェーン」とは応えたものの、未だこのチップの使途は分らぬままである…。

アルテ・ピナコテークにて
折りたたみ椅子を持ち鑑賞する団体。これは画期的!?
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今度はノイエ・ピナコテーク [2010欧州5ヶ国の旅]

2010年4月29日(木)、現地時間 午後2時48分、ミュンヒェン ノイエ・ピナコテーク脇のカフェー

またビェール…

またビェール…。Hofbraeu Original 3.60ユーロ

あら。見つかっちゃいました?またビェール飲んでますよ。
先ほど、アルテを出て、今度は向かい合って立っているノイエの方へ向かおうとしていたのであるが、
私はノイエへ向かうその少しの間に考えたのである。
今日はとても暑いではないか…。これは、何か飲み物を飲みたいではないかと…。
そしたら、ノイエ・ピナコテークの脇にカフェーがあるじゃないの。私はビェールを注文していた…。
ここでは、ホーフブロイハウスでは飲まなかったホーフブロイ・オリジナルを注文。しばしくつろいだ。

ノイエ・ピナコテーク
ノイエ・ピナコテーク

そして、またほろ酔いで美術館に入館。ノイエ・ピナコテークの入館料はアルテと同じく7ユーロ。
ノイエ・ピナコテークで特に観ようと考えていたのは印象派の一連の作品である。
だが、その印象派の作品群は順路の最後の方にある。そこに至るまではどんな作品があるのか?
私は一通り観て回ったが、あまり印象に残る作品は無かった。ただ、これは単に好みの問題。
ロマン主義の明媚な風景画などがあったが、日本人はやっぱり「印象派」のほうが好きなんですね。
そんな中、多くの人が一度は観たことがある肖像画がここにはあった。

入場ティケット
入場ティケット

ヨーゼフ・カール・シュティーラーによる「ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ」がその作品。
私はシュティーラーという画家のことなど知らないし、この作品も美術史の流れで登場するよりは、
むしろ、文学史の流れの中でゲーテの肖像画ということで登場することが多いと思われるが、
どこかで見たことのある絵画の展示とふいに出くわす状況というのは、なかなか奇妙なものである。
私は小さかった頃、この絵を何かの本で見て怖かった記憶がある。ギョロッとした目が怖かった。
話は逸れるが、作曲家の肖像画が並んでいた小学校の音楽室も怖かったことも想い出した…。

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ

シュティーラー作 「ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ」(1828)


一応は各展示室を巡り、時代が流れ流れて、「印象派」が近づいてくる。
印象派の展示室に入ると、お馴染みの画家による作品が並び、急に明るくなったように感じられる。
まずは、エドガー・ドガの「アイロンをかける女」。この作品は未完成であるという。
オルセーにも同じ主題の作品がある。ひとりがアイロンがけ、ひとりが酒瓶持ってあくびという作品。
一方、ノイエのこの作品の女性はこちらにしっかり目線をやっていて油断していない。
さらに、残像のように描かれた腕からは手を休めていないことが伝わってくる。

アイロンをかける2人の女アイロンをかける女
(左)ドガ作 「アイロンをかける2人の女」(1884)オルセー美術館蔵
(右)ドガ作 「アイロンをかける女」(1869頃)ノイエ・ピナコテーク蔵

マネ、ルノワール、モネ、シスレー、ピサロといった画家たちを一通り観て、後期印象派へ。
ここではやっぱりゴッホに観入ってしまった。何点か展示されているが、ここには「ひまわり」がある。
「ひまわり」なんかは新宿で鑑賞できるのであるが、やはり「ひまわり」はノイエでも目玉作品。
新宿にあるのと比べてみると、背景が水色であるところが大きく違う。新宿のは背景も黄色。
ゴッホには強烈な黄色という印象があるので、新宿のほうがゴッホらしいのかなとか考えてみる。
花瓶に斜めに署名された画家のサインからはゴッホの茶目っけを私は感じ取ってしまった…。

ひまわり(新宿)ひまわり(ミュンヒェン)
(左)ゴッホ作 「ひまわり」(1888)損保ジャパン東郷青児美術館蔵
(右)ゴッホ作 「ひまわり」(1888)ノイエ・ピナコテーク蔵

印象派が終了したと思って油断してはいけない。世紀末芸術が最後の最後で現れる。
クリムトの「マルガレーテ・ストンボロ=ヴィトゲンシュタイン」という作品がある。
ヴィトゲンシュタイン?実はこのモデルはかの哲学者ヴィトゲンシュタインの妹とのこと。
以前はクリムトの作品は苦手だったが、数年前、墓参をしたからか?今ではすんなり鑑賞できる。
顔とかはとても写実的であるが、幾何学的な背景とともに全体からへんてこな魅力が溢れてくる。
さらにもう一点、いかにも世紀末の退廃的なあやしいイメージの作品がここにはあった。

マルガレーテ・ストンボロ=ヴィトゲンシュタイン罪
(左)クリムト作 「マルガレーテ・ストンボロ=ヴィトゲンシュタイン」(1905)
(右)シュトゥック作 「罪」(1893)

フランツ・フォン・シュトゥックの「罪」という作品がそれ。
シュトゥックはこの作品が受けに受け、その後も同じテーマの作品を多数描いたのだという。
いやあ、実にあやしい作品ではありませんか。作品名からして「罪」ですよ。いやんなっちゃうなあ…。
「罪」を鑑賞し終え、美術館のティケット売り場付近へ戻ってくると時刻は16時30分頃。
私はこれでミュンヒェンで取材しようと思っていたところをすべて訪れた。ちょっと疲れたな…。
それじゃ、宿に戻って一休みした後、もうちょっとミュンヒェンの街をぶらぶらと歩きましょうか。

展示風景
ノイエ・ピナコテーク 印象派の展示室
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